第1話 便利屋、HEART・PROTECTION
「さてと、今日も依頼主さんのため、行ってきますっ..一人暮らしだけど..」
「ノエルちゃんおはよう。 この前はペンキ塗り手伝ってくれてありがとね。 エイミーちゃんにもよろしく言っといて」
「ミモザおばさんありがとう。 よろしく伝えときますっ」
「ノエル嬢ちゃんや。 昨日はわしのペットのを捜索してくれてありがとの。 ルーシーちゃんいつも忙しそうだから無理しない様言っといてくれ。 それからモニちゃんにはもっと子供らしく遊ぶよう言っといてなぁ」
「ビッケおじいさんどうもーっ、ルーシーには特に伝えておきまぁすっ」
よかった。 今日も朝から街が平和で。 それも私達の活躍のたまものかな。
私、ノエル・イーシャは水上都市ピオスで便利屋を始めて5年。 だいぶ慣れて来たなぁ。
今日も好調なスタート..と思いきや事務所から怒り声が聞こえいつもの事かと思いドアを開けたら..まぁいつもの事だった。
「ですから、ウチは爆発物や違法薬物や武器の運びはやっておりません..えっ? 他に受けてくれるお店はないか? それもほう助になるので知りませんっ、ウチは健全な稼業なんで衛兵に通報しますよ?サイナラ!!
まったく、そろそろ本当に通報しようかな」
「あはは。 エイミーだいぶご立腹だね。 そのせいか前より髪色濃くなった気がする」
『これは元々っ』と言いながら同僚兼親友のエイミーはセミロングの赤髪をかき上げながら愚痴っぽくさっきの出来事を話してきた。
「だって今月だけでもう2回よ? そんな頻度で違法な依頼来たらそりゃ通報の一つもしたくなるわよ..あっ、今月2月だから来月でノエルがウチに来てから5年かぁ、どう? 塔に関する記憶なにか思い出せた?」
エイミーはこうして気にかけてくれるが、14歳の頃、故郷オブリヴの塔に生贄に出された私はその部分の記憶だけが抜け落ち、当時の記憶は未だ戻りそうにない。 塔の呪いで故郷を出ざるを得なくなり母さん父さんとは離れ離れでもうだいぶ会ってないなぁ..強がってもどうせバレるから正直に答えるか。
「いやぁ全然 でもここでいろんな仕事しながらあちこち巡ればそのうち思い出すんじゃないかな?」
「そうだね。 ノエルが定住型じゃない仕事選んだのもそれが理由だものね。 それなら、遠方の依頼をどんどん受けようか、ノエルの手がかり見つかるかもしれないし店長ももうすぐ仕事拾ってくるだろうからさ」
ウチの事務所は地域密着型、それゆえ仕事は待つだけでなく街の人に聞き込みをして足で探すことも多々ある。 ただ、ここの店長ギルバートさんがよく安価で安請け合いして毎月赤字なんだけどね。
2週間前もルーディまで旅行者の護衛をわずか3500ファムで受注してルーシーからこっぴどく怒られてたっけな..と噂してたらドアの開く音が、おっ、帰って来た来た。
「2人共、仕事が入ったんだが、急なところ大丈夫か? 急ぎの依頼なんだ」
ーー依頼内容..行方不明の子供の捜索ーー
「ノエル・イーシャ、エイミー・セルジュ。 この依頼、頼めるかな?」
「店長、この依頼あたしとノエルだとランクが不足してると思うんだけど、それに後でルーシーに怒られない?」
ルーシーは規則に厳しい、ランク不相応の人を依頼に出すなんて絶対許さないから後で店長お仕置きかも。
「責任は私が持つ。 エイミー、ウチの経営方針言えるか?」
「『顧客も携わったスタッフも縁した全てが笑顔に』でしょ? わかってるわよ。 ノエルっ、急ぐわよ」
そうだね。 なんとかしよう、子供の無事考えたら背に腹は代えられないよね。
「あっ、うん待ってエイミー」